中間管理職が職場のストレスを減らすために実践した「人間関係に強弱をつける」方法

対人関係療法の考え方をイメージしたイラスト。ノートに描かれた親しさサークル(関係性の優先順位を示す同心円)と矢印で、対人関係に強弱をつける方法を表現したフラットデザイン。 人間関係・コミュニケーション
図:対人関係療法で学ぶ「親しさサークル」のイメージ

はじめに

職場で「苦手な上司」との関係に悩む部下は多いですが、実は、「苦手な部下」にストレスを感じる上司も少なくありません。

わたしの場合は苦手な部下との関係にストレスを感じていました。

管理職と言う立場はその悩みを周りに相談しにくいという理由などから表面化しにくいということもあるかもしれませんが、共感してくれる方は少なくないと思っています。

上司として、部下や同僚にできるだけ公平に接しようと心がけていましたが、特定の部下とのコミュニケーションがうまくいかず、注意するたびに関係が悪化していくのを感じていました。

同僚であれば距離を置く選択もできますが、上司という立場では避けるわけにもいかず、ストレスが積み重なっていきました。

休職後のリワークで学んだ対人関係療法が、そんな私の考え方を大きく変えてくれました。

この記事では、私がこの2つの学びから得た「人間関係に強弱をつけていい」という気づきと、具体的な変化についてお伝えします。


苦手な部下にストレスを感じる理由と背景

私が特に悩まされていたのは、理不尽な言動や愚痴、被害妄想が多い部下との関係でした。また10歳以上年上というのも相まって関わりにくさを感じさせる要因でもありました。

当時の私は「部下の不満や不機嫌も上司が受け止めるべき」と考え、必要以上に共感し、相手の感情までコントロールしようとしていました。

機嫌が悪い人と接すること自体が自分にとってのストレスなので、自分が嫌な気分にならないためにも、相手にいかに機嫌良くいてもらうか、ということを考えすぎていたのかもしれません。

その結果、自分の中に不満やストレスを溜め込み、疲弊していることに気が付きました。

振り返ると、私が一方的に犠牲になることで場を一時的に保っているだけで、根本的な解決にはなっていなかったのです。


リワークで学んだ対人関係療法とは?効果と考え方

リワークのプログラムの中で、私は対人関係療法(IPT)を学びました。

対人関係療法とは、CBT(認知行動療法)と並んで、うつ病や不安障害の治療に有効であると効果が実証されている心理療法です。

対人関係を「重要な他者(第1層)」「親しい人(第2層)」「仕事上の関係(第3層)」「その他(第4層)」という風に階層で整理し、

特に「重要な他者」との「現在」の関係に焦点を当てることによって

簡単に言うと「人間関係を見直すことで気持ちや症状を軽くする」ことを目的としています。

特に印象的だったのは、「重要な他者(第一層)との関係を大切にすることが回復の基盤になる」という考え方でした。

コミュニケーションのパターンは「重要な他者」との間で一番顕著に表れている。同じようなことが第2層、第3層でも起きているかもしれない、というところから、第1層のコミュニケーションをより丁寧に扱い、問題に向き合って対処することにより、第2層以下で起きている問題も解決につながりやすいという仕組みです。

またそれにより、第1層の関係性にある人たちが、自身の第2層以下の人たちとの対人関係を円滑に進める上でのサポートにもなる、という効果もあるとされています。

人間関係の優先順位を考える親しさサークルの図|第1層(配偶者・親・親友)、第2層(友人・親戚)、第3層(仕事の人間関係)に分けて関係性の強弱を示す
図:人間関係の優先順位を考える「親しさサークル」

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人間関係に強弱をつけることで得られる気づきと安心感

長い間、私は「上司だから誰に対しても同じように接するべき」と思い込んでいました(ここでもまた「🔗べき思考」が出ています)。

しかし、対人関係療法とアサーションを学ぶ中で、「人間関係に優先順位や強弱をつけてもいい」と知り、驚きとともに肩の力が抜けるような感覚、ほっとする感覚がありました。

大切なのは、自分にとって本当に大事な人と健全な関係を保つこと。

そうすることで、他の人にも必要以上に消耗せずに適切な距離で接する余裕が生まれるのだと感じています。


苦手な人との距離の取り方|対処とかわし方の実例

復職後、以前の部下とは別の部署に配属となったのですが、依然として業務のかかわりはありました。

その方の性質も特に変化はなく、むしろストッパーになっていたわたしがいなくなったことにより、他部署の人たちへも良くない影響が広がっている様子でした。

復職後は、その方含め、仕事関係の方とのコミュニケーションについては、基本的には🔗アサーティブに必要なことは伝えつつ、

相手の機嫌や感情まで引き受けない、という気持ちで「かわす」術を身に着けることができています。

「相手が不機嫌になるのは、その人自身の問題だ」と割り切ることで、無駄にエネルギーを消耗しなくなりました。

水島広子先生の著書の中で印象的だったのは、関係性次第で「かわす」か「対処する」かを選択する、という部分でした。

第1層👉基本的に対処する

第2層👉必要な範囲で対処する

第3層👉仕事に支障がなければかわす

第4層👉かわす

(参照:身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本 水島広子著)

これだけはっきりとした線引きの目安があると、落ち着いて対応できるな、と思いました。

これ以外にも、具体的な場面ごとの対応策などがたくさん載っている書籍なので、ご興味のある方はぜひ一度参考までに読んでみていただくことをお勧めしたいと思います。

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信頼できる人との関係を優先する重要性

信頼できる人との時間や会話を大切にするようになったのも、大きな変化の一つです。

以前は「迷惑をかけてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」と思っていましたが、第1層の人には頼っていいと気づけました。

親しい人と過ごす時間を楽しむために、体調管理にも気をつけるようになり、アサーティブに自分の気持ちを伝えることで、以前よりも理解される関係が築けるようになりました。


まとめ

私にとって一番大きな変化は、「人間関係に強弱をつける勇気を持てた」ことです。

第1層の大切な人との関係を大切にすることで、第2層以降の人にも穏やかに接する余裕が持てるようになりました。

それは、重要な他者が私のサポート資源となり、安心感を与えてくれるからです。

もし今、人間関係に疲れている方がいたら、自分にとって本当に大切な人との時間を大切にしてみると少しずつ対人ストレスの問題が解消してくるかもしれません。

参考文献:

身近な人の「攻撃」がスーッとなくなる本 水島広子著

自分でできる対人関係療法 水島広子著


📖この記事で触れた対人関係療法については、こちらの書籍に詳しく書かれています。私自身も実践の参考になったので、興味がある方はぜひご覧ください。

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