はじめに
認知行動療法(以下、CBT)のワークに取り組んでみたけれど、
思ったより進まず、途中で手が止まってしまう――
そんな経験はありませんか。
それは珍しいことではありません。
わたしもそうであったように、多くの人が最初のステップでつまずきを感じるそうです。
この記事を読んで、CBTのワークのやり方はわかっていても、
いざやってみると手が止まってしまう、難しいと感じる原因を整理して、
明日からの取り組みのハードルが下がることを願っています。
今回は、わたしの実体験をふまえ、
CBTのワークが思うように進まない「3つの代表的な原因」とその乗り越え方を解説します。
まずは結論から。
つまづきの原因 ①
「正解を書こう」として手が止まる
→ 対処法:思いついたことを3分で書き出す練習をしてみよう
つまづきの原因 ②
「感情がうまくつかめない」
→ 対処法:感情を表す単語をたくさんリスト化してみよう
つまづきの原因 ③
「思考が整理できず混乱してしまう」
→ 対処法:CBTワークの進め方を専門家と一緒に考えてみよう。小さくはじめよう。
この3つの壁の背景と具体策を知ることで、
ワークがずっと続けやすくなるといいなと願っています。
今日からもう一度、気楽な気持ちで取り組んでみましょう。
CBTワークが進まない原因 ①「正解を書こう」として手が止まる
CBTのワークで最も多いつまずきが、「正解を書かなければ」と考えてしまうことです。
自動思考や感情を書き出すワークに “模範解答” はありません。
目的は「頭の中を整理すること」であり、「正しい答えを書くこと」ではないのです。
ワークに挑戦しようとしてみたものの、
「この考えは間違っているかも」「もっと深い答えがあるのでは」
と立ち止まってしまったことがある人も多いのではないでしょうか。
ワークでは、ありのままの状況・認知・感情などを言語化することが重要なポイントなのです。
対処法|思いついたことを3分で書き出してみよう
最初は「正しさ」より「量」を意識してみてください。
タイマーを3分にセットして、思いついた言葉を箇条書きで書くという方法もあります。
時間内にたくさん挙げた言葉の中から、実際の自分の状態や感情をより的確に表しているものをピックアップしてワークに採用してみるとよいでしょう。
大切なのは、「頭の中に浮かんだ考えを外に出す練習」を積み重ねること。
これを何度か繰り返すうちに、思考の癖や感情のパターンが自然と見えてくるようになります。
👇実際にCBTワークをやってみる
CBTワークが進まない原因 ②「感情」がうまくつかめない
「自分の感情がよくわからない」「どんな気持ちか言葉にならない」という声も多く聞かれます。
これは“感情の語彙”が自分の引き出しの中に足りていないために起きる自然な現象です。
大人になるにつれて、日常生活では自分の感情を言語化する機会が少なく、
表現のストックが不足している状態でワークに臨んでいるかもしれません。
対処法|感情の言葉をリスト化してみよう
まずは、自分の中にある感情の言葉を思いつくまま書き出してみましょう。
やってみると、あまりに思いつく単語が少ないことに驚くかもしれません。
そんな場合は、ネットで「感情を表す言葉」と検索したり、辞書で調べるのもおすすめです。
「孤独感」「焦燥感」「イライラ」「モヤモヤ」など、言葉を“知る”だけでも、次に似た感情が湧いたときに、「今自分はこんな風に感じているんだな」と自分の状態をつかみやすくなります。
感情を表す単語を知ることは、自分の心を理解する第一歩です。
一例として、ポジティブ・ネガティブな感情を表す単語を挙げてみます。
セルフモニタリングなどでぜひ活用してみてください。
💡ポジティブな感情を表す単語
楽しい 幸せ 安心 満足 自信 感謝 誇らしさ 安らぎ 興味 希望
💭ネガティブな感情を表す単語
不安 焦燥感 怒り 恐怖 悲しみ 孤独 罪悪感 無力感 混乱 疲労感
👇実際にワークをやってみる
CBTワークが進まない原因 ③ 思考が整理できず混乱してしまう
「考えがぐるぐるして何を書けばいいかわからない」という状態は、心のエネルギーがまだ十分に回復していないサインだという可能性もあります。
ストレスが強いときや調子が安定していない時期には、頭の中を整理すること自体が難しいので、ワークよりも休息が必要なタイミングかもしれません。
対処法①|専門家と一緒にペースを整えよう
もし思考がまとまらず頭がぐるぐるしてしまうなら、
まずは「今はワークに取り組む体調が整っていない」可能性もあります。
その場合は、主治医やカウンセラーに「今の状態で進めても大丈夫か」「どのくらいのペースが適切か」を相談してみましょう。
対処法②|”小さな場面”から始めよう
また、もう一つ大切なポイントは、「扱う場面のハードルを下げる」ことです。
最初から深刻なストレス体験を題材にすると、思考が複雑になり整理しきれなくなります。
《 例 》
・朝の通勤でイライラした
・飲食店での接客に少しモヤっとした
・休日の予定が思い通りにいかず落ち込んだ
といった、最近の日常の小さなストレスシーンから始めるだけで、思考の整理はぐっと簡単になります。
わたしも当初は、
休職中に朝起きられなかったことや夜ダラダラ過ごしてしまう、
という場面を取り上げて問題解決するところから始めました。
慣れてきたら、少しずつ大きなテーマへとステップアップしていくのがむしろ王道です。
👇実際にワークをやってみる
「できない」は失敗じゃない。CBTワークは“慣れ”で身につく
CBTのワークは、筋トレやリハビリと同じで、一度でできる人なんていません。
わたしも最初のうちは慣れずに、ワークをやった日はどっと疲れてしまう日もありました。
ただ、そんな日でも達成感や小さな気づきがあったので、次もやってみようと思えました。
できない日があっても、それは失敗ではなく「今の自分を知る手がかり」です。
大切なのは、「やめない」こと。
CBTのワークをやってみよう、と思った時点でもう良い方向へ向かっていると思って良いのです。
たとえ一行しか書けなくても、それは確実に前進です。
繰り返し取り組むうちに、少しずつ自分の考えや感情が見えてきて、気づいたら思考を整理する力が身についています。
CBTワークに取り組んだ後は、ゆっくりドラマを見るとか、お菓子を食べるとか、自分なりのごほうびの時間を用意してみてください。そしてたっぷり睡眠をとるようにしてください。
わたしも日々ワークに取り組んでいます。いっしょに学びましょう。
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