言いたいことが言えない苦しさから解放!休職経験者が語る「アサーション」がもたらした心の自由

人間関係・コミュニケーション

言いたいことが言えない苦しさから解放!休職経験者が語る「アサーション」がもたらした心の自由

はじめに:相手の反応を気にしすぎて何も言えなかったわたし

会議で意見を求められても、つい黙ってしまう…

本当は引き受けたくないのに、『NO』が言えず、結局残業で疲弊してしまう…

なぜかいつも、自分の気持ちより相手の気持ちを優先してしまい、後で後悔する…

こんな経験ありませんか?

もしそんな悩みを抱えている方がいたなら、かつての私も全く同じでした。相手に気を遣いすぎて言いたいことが言えず、自分の心を押し殺してしまう。その結果、人間関係のモヤモヤを抱えたり、人とのコミュニケーションに苦手意識を感じることが多々ありました。

そんな私が、休職中に通っていたリワークプログラムで初めて「アサーション(アサーティブコミュニケーション)」という言葉と概念に出会いました。それまでは恥ずかしながら、その単語すら聞いたことがありませんでした。

今回の記事では、アサーションとは何か、なぜそれが私たちの心と人間関係にとって重要なのかを、私の具体的な体験談を交えながらお伝えします。正直、会社の研修でやってほしい、とまで思っているくらい、もっと早く知りたかったし、健康な社会人(というか、こどもから大人まで)みんなが知っていて損のないスキルだと言っても過言ではないと思っています!


アサーションとは?「相手の受け取り方はコントロールできない」という自由

アサーションとは、簡単に言えば「自分も相手も大切にするコミュニケーション」のこと。自分の気持ちや意見を正直に、かつ相手を傷つけずに伝えるスキルです。

私たちのコミュニケーションは、大きく分けて次の3つのタイプに分けられます。

  • ノンアサーティブ(非主張的):自分の意見や感情を我慢して言わないタイプ。波風を立てたくない、嫌われたくないという気持ちから、相手の意見ばかり優先してしまいがちです。結果としてストレスをため込み、後で後悔することも。
  • アグレッシブ(攻撃的):自分の意見や感情を押し付け、相手を威圧したり、傷つけたりしてしまうタイプ。自分の主張を通すことばかりに意識が向き、相手の気持ちを無視してしまうことがあります。
  • アサーティブ(主張的):まさにアサーションが目指す、お互いを尊重する関係です。自分の意見や感情を正直に、しかし相手の気持ちも尊重しながら伝えるタイプ。相手を非難せず、「私はこう思う」「私はこう感じた」と「I(私)メッセージ」で伝えるのが特徴です。

引用元:平木典子著「図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ」

以前の私は、間違いなくノンアサーティブタイプでした。何か言いたいことがあっても、「こう言ったら相手はこう思うだろう」と先回りして想像し、波風が立つくらいなら黙っておこう、と自分の気持ちを押し殺す毎日。さらに重症なことに、そうするのが当然の礼儀だと考えていたこともあり、知らず知らずにストレスを抱える毎日を送っていたと今となっては思います。
しかし、アサーションを学ぶ中で、私にとって最も大きな衝撃であり、同時に心の重荷を下ろしてくれたのが「自分の伝えたことを相手がどう受け取るかは、相手の自由であり、それをコントロールしようとしなくていい」という考え方です。
このシンプルな真実を知ってから、私は人づきあいに対する肩の荷がおりたような感覚がありました。

リワークで学んだアサーションの実践ステップと練習法

リワークプログラムでアサーションの基礎を学んだ後、私がさらに理解を深める上で大変お世話になったのが、平木典子先生の『図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ』という書籍です。

図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ [ 平木典子 ]

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感想(27件)


この本は、アサーションの基本から具体的な実践方法までが、図解でとても分かりやすく解説されています。

アサーションの核心である「相手の受け取り方は相手の自由」という概念を、より深く腑に落とすためのヒントが詰まっていました。
私がこの本をおすすめする理由は、単なるノウハウ本ではなく、自分自身のコミュニケーションパターンを見つめ直し、なぜ言いたいことが言えないのか、なぜ我慢してしまうのかという根本的な部分に気づかせてくれるからです。自己カウンセリングの視点も含まれているため、自分と向き合いながら、一歩ずつコミュニケーションを変えていく力を与えてくれます。

会社で特定の人と話したくないけど話さないといけないとか、言いにくいことだけど言わなきゃいけないシチュエーションがありストレスを感じている、など社会人あるあるだと思いますが、少しでもそういうものがあるのであれば、一読の価値はあると思っています。

ちなみに、上で紹介したのは「伝える」側の本ですが、「聞く」側のアサーションについて書かれているバージョンもありますので、併せて読むとさらに効果的だと思います!

会話が続く、上手なコミュニケーションができる! 図解 相手の気持ちをきちんと<聞く>技術 [ 平木 典子 ]

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さて、ここからはリワークで学んだアサーションの具体的なステップと、私が行った練習法をご紹介します。

アサーションの基本フレームワーク「DESC法」

DESC法は、自分の気持ちや意見を伝える際に役立つ4つのステップです。

D (Describe):事実を指摘する 客観的な状況や行動を具体的に描写します。感情や判断を入れず、「いつ、どこで、何が起こったか」を伝えます。
E (Express, Explain, Empathize):気持ちや考えを表現する その事実に対して、自分がどう感じたか、どう考えているかを正直に伝えます。
S (Specify):してほしいことを特定する 相手に具体的にどうしてほしいか、明確に伝えます。抽象的ではなく、具体的な行動を依頼しましょう。
C (Choose, Consider):結果への対処を考える 相手が提案を受け入れた場合と、受け入れなかった場合の、それぞれの結果や選択肢を考え、伝えます。

引用元:平木典子著「図解 自分の気持ちをきちんと<伝える>技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ」


DESC法を実践!一人でできるワーク

DESC法の考え方を身につけるために、自分一人でもできる簡単なワークをご紹介します。
準備: 紙とペンを用意します。


シチュエーションを特定: ここ最近で、あなたがノンアサーティブなコミュニケーションをしてしまい、後悔した、またはモヤモヤしたシチュエーションを一つ思い出します。

例

同僚から急な仕事を頼まれ、本当は忙しかったのに『はい』と引き受けてしまった。

客観的に描写(Describe): 思い出した出来事や状況を、感情を交えずに客観的に書き出します。

例

今日、Aさんから退勤間際に〇〇の資料作成を頼まれた。

気持ちや考えを表現(Express): そのとき、あなたがどんな気持ちだったか、何を考えていたかを正直に書きます。

例

本当は今日のノルマが終わっていなかったので、少し困ったと感じた。また、急な依頼だったので、自分の計画が狂ってしまい、イライラも感じた。

してほしいことを特定(Specify): 相手に具体的にどうしてほしいか、言葉を選んで書き出します。

例

次回からは、急な依頼の場合は前日までに相談してもらえると助かります。あるいは、締め切りを明確にしてくれると、こちらも対応を考えやすいです。

結果への対処を考える(Choose): 提案に対する想定される相手の反応(「OK」か「NO」か)を予測し、それぞれの場合の自分の対応や結論を考えます。

例(Yesの場合): 「次回から改善されるので、私も安心して業務に取り組める。」
例(Noの場合): 「代替案を提案するか、自分の状況を再度説明して、無理な場合は断る勇気を持つ。」

このように、自分のしてほしいことを率直に(嫌味なく)伝え、それに対するリアクション(Yes or No)を事前に予測し、いずれの場合の対応策も用意しておく、というのがポイントです!

「I(私)メッセージ」の重要性

DESC法と合わせて実践したいのが、「I(私)メッセージ」です。これは、主語を「私」にすることで、相手を責めずに自分の気持ちを伝える方法です。
例えば、

NG例
NG例

なんでわかってくれないの!

こんなふうに相手を非難する場合、以下のようにIメッセージに置き換えることができます。

GOOD例<br>1
GOOD例

あなたが理解してくれていないのではないかと思うと、私は不安です。

GOOD例<br>2
GOOD例

あなたに理解してもらえないと、私は悲しいです。

ワークを深めるためのヒント

とは言え、どちらのワークも、「自分ひとりではアイデアに限界があるよ、、」「なかなかいいセリフが思いつかないな~」と感じた場合には、信頼できる友人や家族にも聞いてみるのもおすすめです

自分とはまた違う視点からの意見はとても参考になるものです。もしアイデアが出なかったとしても、「私もそういうとき、相手に正直な気持ちを言うのはむずかしいんだよね」などと共感してもらうだけでも、自分のなかのモヤモヤしたものが晴れることがあります。


私自身、もともと人にあまり悩みを相談するタイプではありませんでした。ですが、こうしたワークを通して、「相談」というよりは、あの人だったらどう対応するだろう?という好奇心を持って他の人の意見やアイデアを参考にするために聞いてみる、という目的で気楽に話せるようになりました。

親しい人であれば、この人は普段こういうふうに考えているんだな、と日常会話では知ることのなかった新たな一面や考え方に触れて、感心したりその人への理解がより深まったりするのもまた利点だったりします。これもまた、アサーションを学んだことで得られた自分自身の良い変化だと思っています。

アサーション実践!私の「リアルな壁」と乗り越え方

アサーションの知識を得ても、いざ実践となると「本当に言えるかな」「相手の反応が怖い」と感じることが多いのは当然のことです。私自身も、リアルな場面でアサーションを試みる際には、いくつかの壁にぶつかりました。

予想外の「取り越し苦労」と、小さな成功体験の積み重ね

アサーションを実践してみて驚いたのは、自分の予想に反して、相手が自分に対してネガティブだったり攻撃的に反応してくることはめったになかったということです。まさに「取り越し苦労」だったと痛感しました。


初めて「NO」と言えた時: 復職後に嫌いな仕事や苦手な分野の依頼(私の場合は単純な事務作業など)があった際に、「すみませんが、自分はこういう作業をするのは苦手で強いストレスを感じます。今回だけであれば対応可能ですが、次回またある場合はほかの方法や担当者を検討してほしい。」と提案してみました。相手は意外にもすんなりと「分かった、外部の人にこの作業は頼んでみる」と言ってくれました。一見わがままに見えるかもしれませんが、本当のことだし、言わなければ相手もそんなにストレスを感じるということは知ることができませんよね。この業務はアウトソースしてもらえて、今でもわたしに依頼がくることはなくなりました!

とは言え、わたしがなんでもかんでも率直に自分の意見を言っているわけではありません。自分の手に負えなさそうなこと、つまり自分がした提案に対する相手の反応を想定したときに自分がうまく対処できそうもない、と思ったときには、そもそも「言わない」という選択肢も持つことにしています。時に潔く手放すことも大事だと思います。アサーティブなコミュニケーションへの道はまだまだ長いですね!笑

アサーションがもたらした、私と人生の変化

アサーションを実践するようになってから、私の内面や人間関係、そして人生そのものに、目に見えるポジティブな変化が起こり始めました。

「心の負担」からの解放と、自己肯定感の向上

「相手の受け取り方を気にする」という重荷を手放すように意識することで、コミュニケーションの度に感じていた心理的な疲労がかなり減っていることに気が付きました。以前は、人との会話の後にどっと疲れを感じていましたが、今は以前に比べそういう日が減ったように思います。
自分の意見を率直に伝えられるようになったことで、自分自身を尊重できるようになったという変化も大きいです。「自分を大切にできている」という実感が、精神的な安定と自己肯定感の向上につながっているのかもしれません。

「信頼されている実感」と、より良い人間関係へ

自分の本音を適切に伝えられるようになったことで、周りの人たちから相談されたりすることも増えて、信頼されているんだなと実感するようになりました。アサーションは、単に自分の主張を通すだけでなく、相手への敬意も含むため、健全で対等な人間関係を築く上で非常に有効だと実感しています。
以前は言えなかった感謝や賞賛の言葉も、素直に伝えられるようになりました。率直な言葉は、相手にとっても心地よい場合が多く、人間関係の透明性が増し、余計な誤解やすれ違いが減ったように感じています。

仕事や日常生活での具体的な変化

アサーションのスキルは、仕事にも日常生活にも活きています。


仕事で: 無理な業務の調整を依頼したり、自分の得意分野や苦手なことを上司や同僚に伝えたりすることで、より効率的でストレスの少ない働き方ができるようになりました。


プライベートで: 友人からの誘いに対して相手の都合に合わせすぎず、逆に「〇〇へ行きたい!」「〇時くらい集合だといいな」と自分の希望を伝えたりできるようになり、日々の満足度が向上しました。


アサーションは、私にとって「私らしく生きる」ための強力なツールとなりました。自分の気持ちに正直になり、それを尊重しながら伝えることで、以前よりも身軽に毎日を過ごせるようになったと感じています。

まとめ:アサーションで、「心の自由」を手に入れる

今回の記事では、アサーションとは何か、そして私がリワークで学び、実践することで得られた心の変化についてお伝えしました。特に「相手の受け取り方はコントロールできない」というシンプルな真実が、いかに私のコミュニケーションを楽にし、自己肯定感を高めてくれたかを実感していることが伝わっていたらうれしいです。
アサーションは、特別な人だけができることではなく、練習で身につく「スキル」であり、誰もが習得できます。そして、小さく始めやすいというのもメリットです。

ちなみに、わたしは、友人や家族に対して「いいな」と思ったことを口に出してほめることから始めました。ポジティブな気持ちを率直に伝えるのは自分にとっても相手にとっても良いことしかないと思いますので、率直に気持ちを伝える練習には最適かと思います。
アサーションの実践は、ときに勇気がいるかもしれませんが、それは間違いなく、わたしの心の平穏と自己肯定感を高め、肩の力を抜いて自然体で生きるための大きな助けとなりました。このブログを読んでくださった方の心の自由につながれば幸いです。


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